腎機能障害患者における薬剤の投与に関する書籍は様々なものがあるが、肝障害時の薬剤投与に関する書籍は少ない。
「肝機能低下時の薬剤使用ガイドブック」がじほうから出版されているものの2004年出版であり、最近発売された薬剤に関するデータは当然無い。
サンフォード感染症治療ガイド2018では肝障害時の用量調整が必要な薬剤としては記載されていない。
しかしながら、キノロン系抗菌剤はレボフロキサシン(商品名クラビット)等が腎機能低下時に薬剤投与量が調整が必要なため、腎排泄のイメージが強いが、比較的脂溶性が高く、組織移行性も高い。
肝傷害患者への投与に迷った場合、私が参考にしているものは、インタビューフォームやPhysicians' Desk Referenceである。
インタビューフォームは日本で出されているものであり、ある程度日本人のデータを踏まえているケースが多い。特定の背景を有する患者に関する注意に「肝機能障害患者」が書かれていれば、参考にしやすい。しかしながら記載されていない場合もあり、その場合は代謝に関する記載が参考になる程度となる。
実際、今回、調べたキノロン系抗菌剤に関しては、「肝機能障害患者」に関するデータは触れられていない。
Physicians' Desk Referenceは、医師用卓上参考文書であり、FDA(米国食品医薬品局)が認める処方薬情報が記載され、医療従事者が日常的に参照する文献である。しかしながら、海外のデータであり、投与量が異なるケースもあるため留意が必要である。また、米国で販売されていない薬剤は記載がないため、その点も難しい点ではある。
Physicians' Desk Referenceではレスピラトリーキノロンのデータは下記のようになっている。(詳細はPhysicians' Desk Referenceにて確認願いたい。)
ガレノキサシン(商品名:ジェニナック):米国での販売なし
モキシフロキサシン(商品名:アベロックス):
軽度または中等度の肝機能障害には投与量の調整は不要。
重度の肝機能障害のある患者は不明
シタフロキサシン(商品名:グレースビット):米国での販売なし
レボフロキサシン(商品名:クラビット):投与量の調整は不要
トスフロキサシン(商品名:オゼックス):米国での販売なし
このような形となり、Physicians' Desk Referenceだけでは難しい点もあり、現実的にはこれらのデータをつなぎ合わせて、インタビューフォームの代謝や構造式等より類推していく形になると考えられる。